2008年08月18日

知られざる近代化学の歴史

お盆休み中、とても興味深い事柄にぶちあたりました。テレビで紹介されていた廃墟。それは、九州のダム湖に沈んだ発電所跡だったのですが、アニメ「神霊狩 -GHOST HOUND-」で物語の鍵を握っていた廃墟にそっくり!調べてみると、とても興味深いものでした。

簡単に「神霊狩 -GHOST HOUND-」という作品を振り返ってみると、舞台は九州北部の山間部。3人の男子中学生が、<現世(うつしよ)>と<幽世(かくりよ)>を行き来しつつ、心理学や民俗学などをからめて生命科学にせまり、宗教から政治に至るまで様々な問題を内包しながら進んでいく物語でした。結局、問題提起ばっかりで、何が言いたかったのかわからなかったけど(笑)だって、話が広がり過ぎちゃってさ。今日はちょっとネタバレありかも。

この作品の中では、病院の廃墟として登場する印象的な建物、実はこの曾木発電所がモデルになっていたのですね?第1話を観返してみたら、まんまでした!総レンガ作りで、屋根を支える壁の前面部分にある特徴的な丸い窓。屋根に当たる部分が崩壊していて、三角の壁だけが残っている様子までも一致してます。
歴史を紐解いてみると、見た目だけでなく、興味深い事実がわかります。曽木発電所は、鹿児島県大口市にあります。明治40年に建造され、電力を供給するようになったわけですが、明治42年に建てられた第2発電所がモデルになった建物だと思われます。最大可能発電量は6700キロワット。ドイツのシーメンス社製の発電機を使い、当時としては国内最大の電力量を供給し、一般家庭をはじめ、近郊の炭鉱や工場にその電力が送られていたそうな。そしてそれでも余った電力は、水俣まで送られ、カーバイドの工場などに利用されたということです。昭和40年に下流に新たな発電所ができてダム湖に沈むまでは稼動していたようです。そして、夏場に水位が下がる度に、その姿を現すのみとなりました。
”水俣”といえば、水俣病。日本チッソという企業名が浮かびます。曽木発電所を作った曽木電気の創業者・野口遵(したがう)は、シーメンスの日本出張所で働き、そこで様々なノウハウを身につけた後にこの曽木電気を創立。もともとカーバイドの生産を視野に入れて発電所を作ったともいわれていて、明治40年に水俣につくられた日本カーバイド商会と曽木電気が翌年には合併。それが、日本窒素肥料株式会社。つまり、水俣病の原因を作った日本チッソ。

ここで「神霊狩 -GHOST HOUND-」に戻ると、九州の山奥に最先端の生命科学研究所が建てられていて、そこでは生命体を作り出す研究がなされ、その実験段階で生まれた生物ともなんともいえないものが、川に流出するという展開があります。なんだか繋がりませんか。

しかし、曽木電気から生まれたのは、日本チッソだけではないのです。アンモニア合成に成功したことから宮崎県延岡市にそれを利用した繊維工場を作る。それが、延岡アンモニア絹糸株式会社。現在の旭化成。もうひとつ、日本窒素肥料株式会社のプラスチック事業部門が、積水化学工業となったという…。
日本の化学工業の黎明期を担っていたのが、この曽木発電所を中心とした九州一帯だったということなのですよ。
ちなみにカーバイドというのはですね。炭素化合物の総称とされてますが、つまり超鋼。非常に硬い合金ですね。そして、もうひとつ。カーバイド・ランプってのがあるそうで、カーバイドと水を反応させてアセチレンで火を灯すというもの。昔の炭鉱などではよく使われていたのだそうですね。こういった工業の元となるようなものを独り占めするかのような企業が、九州にあったとは知りませんでした。

もうひとつ、ひっかかったのはシーメンス社。シーメンス事件ってありましたよね。日本海軍とシーメンス社との賄賂事件。「神霊狩 -GHOST HOUND-」でも、宗教を通じて、中央の政権と九州との繋がりが出てきたりするのですが、この辺も興味深いです。
こういった下地があってはじめて、ああいう奥深い物語になっていくのだな、と。

今回の記事を書くにあたっては、コチラの「九州ヘリテージ」さんを参考にさせていただきました。詳細な記述で大変興味深いことばかりでした。
今の図書館は、地域の歴史的資料収集よりもベストセラーを購入することが優先されているとその存在意義を疑問視されている記述を見たことがありますが、地元でしか知りえない細かな歴史が、こうしてネット上で展開されているのを見かけると、頼もしい気持ちになります。
こんなこと歴史の教科書には載らないからねぇ。
posted by nbm at 14:09| Comment(6) | TrackBack(0) | コミック・アニメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 実は最近、この曽木発電所に関してのレポが載ったブログをどこかで読んだので、はて、どこだったか? と巡回先をグルグルしてみたり、検索してみたりしたのですが、全く分からない。
 うー、なんだか、気持ち悪いよぅ。

 まぁ、それはさておき。
 興味深いお話ばかりでした。
 物語は、バックグラウンドが深ければ、深い程、面白いのでしょう。
Posted by redpill at 2008年08月19日 23:37
redpill様

なんだか隠蔽されてたのかってくらい情報が少ないです、曽木発電所。
もしそのブログを再度発見されましたら、ぜひご一報ください!
夏場だけ見学できるようなことをテレビで言ってました。
redpillさん、同じ九州ってことで、今度現地レポートしてみませんか(笑)
ちょっと遠いですかね?

「神霊狩 -GHOST HOUND-」は、とってもオリジナリティがあって
興味深い作品ですよ。
少年たちが幽体離脱して、現世とレイヤー構造の幽世とを行き来します。
専門的な心理学用語がキーワードになっていたり
民俗学や神話的な要素がちりばめられていたりするので
色々な側面から好奇心をくすぐられっぱなしの作品でした。
Posted by nbm at 2008年08月20日 10:21
この曾木発電所は知っています、訪ねた事あり。

歴史的業績についての知識は無かったので勉強しました、おっしゃるようにレンガ造りの風格を感じさせる建築物でしたね、前に川があり、発電所に通じる危うげな狭い鉄橋が通じていました、それがダムの底ですか、感無量。

ハハ、nbmさんのお年ではカーバイドランプ、ご存知無いのですね、かつての祭礼などの露店の明かりは皆これでした、言葉で表現し難い独特の匂いを漂わせていました、これも懐かしい話題。
Posted by 草人 at 2008年08月20日 11:27
草人 様

そうですか!訪ねたことがおありとは!
ということは、まだダムに沈む前ってことですね?すごい…。
夏場しか現れない建物とはいえ
歴史的な価値を考えて、その夏場に修復を繰り返しているそうですよ。
面白いですね。

カーバイドランプ。
たぶん目にしてはいるのでしょうが
そういったメカニズムで点灯しているとは知りませんでした。
少なくはなったようですが、現在でも使われているそうですよ。
Posted by nbm at 2008年08月20日 13:46
 鹿児島か〜。遠いなぁ。。
 
 大分〜宮崎の間(九州東海岸)には高速道路が開通していないので、大分から鹿児島に行くには、一般的に、大分から熊本にでて、それから熊本〜鹿児島(九州西海岸) を走ることになるんです。。

 でも、見てみたいなぁ。今夏は無理かもしれないけれど。

 神様、私に体力と気力と、ちょびっとの燃料代を下さい。。。
Posted by redpill at 2008年08月21日 00:31
redpill様

やっぱり遠いですよね、鹿児島。
水に漬かっても、それなりに修復しているそうですから
まだ当分もつんじゃないでしょうかね。
ぜひ、いつか訪ねてみてください。
redpillさんがお写真を撮ったら
また格別に趣のある建造物に見えると思うのでね。
神様には私からもお願いしておきましょう(笑)
Posted by nbm at 2008年08月21日 09:59
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