2009年04月23日

ギジン

またまたテレビから。
NHK教育テレビの番組だったか、松井今朝子さんという方が歌舞伎について語られていまして、その中で興味深いことがひとつありました。
蜷川幸雄さんがシェイクスピア劇をロンドンで公演されたとき、人が二人入る馬を舞台に登場させたところ、場内が大爆笑になったという話。ロンドンの人には、どうもギャグに見えたらしい。でも、蜷川さんは、笑いを取ろうと思ったわけじゃないみたい。
松井さんによると、獅子舞のような、あの作り物の二人がかりの馬は、歌舞伎に出てくる独特のスタイルなのだそうです。たとえば、京劇にも出てこないし、狂言にもない。シェイクスピアの本場、ロンドンでは、シェイクスピアの舞台に動物が登場することはあまりないらしい。作り物の動物は笑いの対象にしかならないようです。日本人にしてみると御馴染みの、テレビでやっているコントなんかでも度々目にしてきたあの二人がかりの馬は、歌舞伎が元になっているんですね。

歌舞伎には、馬だけでなく、動物が登場する演目がたくさんあるのだそうです。有名なのは、『義経千本桜』。歌舞伎に疎い私でも題名くらいはなんとなく知ってますし、白い毛のようなもので覆われたモコモコのお着物を着て演じている役者さんの画像も記憶にありますが、あれが狐だとは知らなかった(笑)両親が殺されて鼓の皮にされてしまったことを悲しんだ子狐が、人間に化けて、その鼓を持っている義経のもとに現れるという話だそうで。

さて、西洋でも、物語の中に擬人化された動物が出てくるものは少なくありません。イソップやグリムなんかの童話を思い浮かべてみればわかりますね。そこには特に抵抗感がないのがわかります。だけど、それが二次元・三次元となると変わってくるんでしょうか。
一方、日本で動物の擬人化といえば、なんといっても『鳥獣戯画』だと思うのですが、古くねぇ?いや古いと言ったら、イソップの方が断然古いだろうけども。ただ、2次元的に擬人化されたものと考えると、やっぱり古いよね。
西洋での絵画というと、キリスト教を中心とした宗教画の歴史が古くて、俗っぽい絵画は19世紀くらいにならないと一般化してこないらしい。
日本では動物を擬人化し絵に描くことに抵抗がないというのは、誰もが想像できるように、日本人が八百万の神を信奉してきたことと関係があるのでしょうね。証拠とまではいかないけれども、動物でさえないものを擬人化してしまってますし。

近年の漫画・アニメでは、その傾向が強く現れてきていると思われます。
90年代あたりからは、猫耳のついた人間型のケモノ(?)が一般化し始めました。猫と人間が混ざったようなキャラクターもあれば、妖精系としてとがった耳がついているものもありますが。
そのうち、毛皮を着たケモノ以外の動物も擬人化されるようになってきます。たとえば『もやしもん』では、菌類が擬人化されていました。数多くの作品で、妖怪などと言われてきた超自然的存在も、人間に近い形で描かれるようになったとも思います。これは水木しげる先生が元祖なのかな?でも、最近の傾向は水木先生の描いたおどろおどろしい妖怪ではなくて、ゴスロリのかわいい女の子だったり、着物を着た綺麗なお姉さんだったり。
それから、無機的なもの(?)まで擬人化されるようになりました。たとえば『ヘタリア』では、国が擬人化されていますし、アニメ化が決定した『ミラクル☆トレイン〜中央線へようこそ〜』では、中央線の駅がそれぞれ個性的なイケメンになってます。東京零・新宿慎太郎・中野陸・吉祥寺拓人・立川ルネ…。
そんなこと言ったら、洋もので『きかんしゃトーマス』ってのもあったね。
だけど、最近の擬人化は萌えの方向が定着し、しかも腐女子系までシフトしてきているような。

たとえば、『ミラクル☆トレイン』のキャラ設定を見るとおもしろいです。HPはコチラ。東京零は、「幼少のころから徹底した西洋教育をされているため、和の心に疎い」「JR一お金持ちの駅であり、御坊ちゃま体質」。新宿慎太郎は、「人が増える度に適当に増設し、公家の持ち物だった場所も平気で潰して拡大するという、度胸と強引さの持ち主」。中野陸は、「自分がおたくである事は歴史的背景からも自認している」。吉祥寺拓人は、「自分が住みたい町ランクでも必ず上位のアイドル駅であることを自認している」。立川ルネは、「アメリカ軍の影響が大きく、ルックスは金髪碧眼である」。オモロー。こうして見てみると、いちいち頷いてしまうところが、駅ひとつとってみても、それなりのイメージで捉えている部分が少なくないのがわかります。こういう共通認識があった方が、擬人化が受け入れられやすいですわね。

こうして考えてくると、特に二次元や三次元で擬人化されたものを受け入れるかどうかというのは、”慣れ”によるところが大きいのかもしれないと思えてきます。
劇場でシェイクスピア劇を観ていて、人二人が入った馬が出てきたら、自分はどう見るかなぁ。それがシリアスな場面だったとしたら、たぶん、笑いを噛み殺しながら見るでしょうね。だけど、家でDVDか何かで観たとしたら、声を出して笑うかもしれませんね。
もしも、自分が歌舞伎を見慣れていたり、シェイクスピア劇を見慣れていたりしたら、そこで全然ひっかからずに何も疑問に思うことなく演目に集中できるかもしれません。

擬人化もやり方というかキャラによるので、個人的には『きかんしゃトーマス』とか、すごくコワいんですけど(笑)あのコワさは、多少”不気味の谷”作用が働いているんだろうか。
同じ擬人化といっても、近年の漫画・アニメ作品では、思いっきり人間と違う形をしているか、もしくは猫耳キャラだったら、人間の形に耳としっぽがついている程度。じゃなければ、設定だけは擬人化されているけれども、キャラクターの見た目はまるっきり人間。これがアニメでなくCGとなってくるとまた話が違ってくるところが面白いけど、長くなったので、今日はこのへんで。
posted by nbm at 11:57| Comment(5) | TrackBack(0) | コミック・アニメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご無沙汰でしたね
そうですか…蜷川さんがねぇ、わかりますよ会場の爆笑は、nbmさんご推測の通り、アングロサクソンたちにはギャグにしか見えないでしょう。
かの地でよく歌舞伎が人気を博すと聞くのですが、あの象徴的な動作を理解できているのかなぁ…
以前、安徳天皇女性説を書いたのですが、この「義経千本櫻」はそのようです、機会を見てご覧になれば…
Posted by 草人 at 2009年04月23日 16:27
今日たまたま図書館で松井今朝子さんの本を借りてきました。時代小説ですが、切れがよく、一気に読めます。松竹に勤務していたことがあるそうで、歌舞伎の評論など書いている方なんですね。
あの「馬の脚」は歌舞伎独特のものなんですか、なんとなく愛嬌があって、見てて楽しいですよね。
Posted by 葛の葉 at 2009年04月23日 21:56
草人 様

お帰りなさい!
感覚って違うものですね。
特に笑いのツボはやっぱり違うよなぁと思います。
歌舞伎が外国で人気なのは、単にオリエンタルな雰囲気が珍しいだけでは?
松井さんのお話を聞いていて、歌舞伎も面白そうだと思ったのですが
やっぱり少し勉強してからでないと
観るのが勿体ないような気がして(笑)


葛の葉 様

それは偶然ですね!シンクロニシティだ!
松井今朝子さんは、時代小説を書かれている作家さんでもあるようですね。
歌舞伎を陰で支えてこられた方のようですね。
記事にするにあたって、どのように紹介したらよいか悩みました(笑)
ひらたく言えば、きっと”歌舞伎オタク”。
それが高じて職業になってしまったような方だと思います。たぶん。
郷土芸能とかだと、きっと日本中にあるのかもしれませんが
舞台上の馬で、あのスタイルは歌舞伎だけではないかというお話でした。
逆に歌舞伎でもホンモノの馬を使ったこともあるのだそうですが
それは例外的だったようですね。
私個人としては、ドリフターズがコントでやっていた印象が強いですが(笑)





Posted by nbm at 2009年04月23日 23:10
 読もうと思って、まだ読めないでいる最近の漫画の1つに、「聖☆おにいさん」があります。

 あれは、神様まで擬人化しちゃってるんですよね。
 日本の漫画はスゴいわ。GWに読まなきゃ。

 そういえば、ふと、日本には古い道具が神様になるっていうのもあったなぁ、と思って、色々とググって名前を思い出しました。
 付喪神というんでした。
Posted by redpill at 2009年04月23日 23:17
redpill様

「聖☆おにいさん」は、話題になってますね。
先日、原宿駅だったかな。山手線に乗っているときに
線路の向こうにデカデカとポスターが貼ってあるのを見て
そういえば、そんな作品があったなと思い出したのを思い出しました(笑)
アニメでも神様が出てくる作品ってのも多いですねぇ。
『かみちゅ』では、中学生の女の子がある日突然神様になってたという設定で
彼女にはあらゆる神様が見えるようになるのですが
それこそ九十九神がたっくさん出てきました。
空き缶とか、タイヤとか、豆腐とか(笑)
『千と千尋の神隠し』よりも、もっともっと俗っぽくて
逆にリアリティがあるほどの乱雑さでしたね。
そこまで思い出したら、映画『マニトウ』を連想してしまいました。
ネイティブ・アメリカンも同じようなことを考えていたんですね。
機械にも”マニトウ”があるんだぁって感心したもんです。

Posted by nbm at 2009年04月27日 10:53
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