2011年06月28日

阿呆みたいな、でも、とても幸せな物語

万城目学さんの『プリンセス・トヨトミ』を読んでみた。私にしてみれば、久しぶりの万城目作品。
なるべくネタバレしないよう多くを語らずに書きたいと思う。

五月三十一日、十六時のことである。
大阪は全停止した。


会計検査院の3人の調査官が触れることになる、「大阪国」の秘密。

旧中ノ島公会堂(大阪市中央公会堂)と東京駅。”辰野式”と呼ばれる、赤煉瓦に白い石を帯状にめぐらせるデザインという共通点があるのを知らなかった。
そして、国会議事堂と辰野金吾との関係性…。そのあたりが、この壮大なホラ話(失礼!)に現実味を持たせてくれたのだろうね。
大阪は古い建築物が多く残る街で、そんな建築物を巡るツアーもあると聞いたことがある。こういう観点で観る大阪もいいかもね。

テレビをつけ、そのまま映った「クローズアップ現代」を聞きながら、二人は焼きそばを食べた。


「はよ、好きなときに着られるようになったらええな」
とつぶやき、島は踊り場まで残り五段を「らっ」と一気に飛び降りた。

「じゃあ、これから先輩のとこ、行ってみようかな」
「何しに?」
「代紋かっさらいに」

「(中略)男が何かアホなことやってるらしいけど放っとこ━━それだけ」


私のアンテナにひっかかったフレーズをピックアップしたら、こんな感じになる。
大阪を舞台にしたことで、「本当にそんなことがあるのかも」と勘繰りたくなるような。
逞しさとか独自性とか人情に厚いとか、さ。変な団結力があって。パワー絶大。でも、実際大阪にこんな秘密があったら、おっちょこちょいな人がどこかで漏らしそう(笑)
根無し草埼玉で生まれ育つと、特異な文化を持っている土地や、そこに暮らす人々をとても羨ましく思うことがあるんだ。そのことについては、近くあらためて記事に書きたいと思う。

ところで、原作では、鳥居(男性)と旭(女性)だけれども、映画版は、この鳥居と旭の性別が入れ替わっているそうだ。これは、この物語の根幹を狂わせるものであって、それで何を描こうっていうのだろうと疑問に思った。まったくもって意味不明。綾瀬はるかという女優に、”ミラクル鳥居”をやらせたかった気持ちはわからなくはないけれども、原作とはまったく違う話になってしまうね。どこにどうやって落とすというのか…?逆に知りたいわ。
大阪の町並みを歴史的・建築史的に映像として見るためには、映画版が便利そうではあるけれども、内容としては設定だけでオススメできないな。まだ見てないけど。

それはさておき、登場人物それぞれが、周囲の人に守られながら、筋を通していく。
阿呆みたいな話。でも、とても幸せな人たちのとても幸せな物語。
posted by nbm at 09:26| Comment(2) | TrackBack(1) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは!

小説版『プリンセス・トヨトミ』は、ドタバタだけど着地も納得で、
万城目学作品らしい作品に仕上がっていたと思います。
うん、満足。

>この物語の根幹を狂わせるものであって、それで何を描こうっていうのだろうと疑問に思った。
ですよね。
映画版は見ていませんが、鳥居と旭の性別を入れ替えてしまうのは少し乱暴すぎるような気がします。
どーして入れ替えてしまったんでしょうね。
Posted by ミユウ at 2011年07月10日 17:00
ミユウ 様

読み終わってみたら
「一体、何だったんだろう?」と思うのですが(笑)
読んでいるときは楽しませてもらいました。
良質のエンターテインメントでしたね!

鳥居役に綾瀬はるかを抜擢したかったがために
旭が男性になるということになってしまったのだと思われ…
彼女はとても素敵なコメディエンヌですけれど
それで旭が男性になってしまうと作品としての意味がないですよね。
映画版のみを観た方には
最後の旭の『太閤』での種明かしのような独白は聞けないはずで。
別物として楽しむしかないけれど、意味がわかりませんね(笑)
Posted by nbm at 2011年07月11日 08:53
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