2011年07月28日

古の力宿る湖

万城目学さんの『偉大なる、しゅららぼん』を読んだ。万城目さんの長編作品としては、これで残すは『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』のみ。こちらも近々読んで、まずは長編を制覇しておこうと思う。『偉大なる、しゅららぼん』は、2006年に『鴨川ホルモー』でデビューした万城目さんの6作目。まだまだ作品は少ないとはいえ、私にしてみれば著作のほぼすべてを読んでいる作家さんで、こういう存在は珍しい。この方の作品の肝は、荒唐無稽な設定で、コミカルに話が進むところ。読後感が爽やかなのもいい。小難しいことや、涙するような物語は他の人に任せて、同じようなテイストの作品を生み続けて欲しいと、私は希望する。

さて、『偉大なる、しゅららぼん』。
琵琶湖畔が舞台。”湖の民”としてそれぞれ特殊な力を持つ二つの家系が対立してきた歴史の中で、突如として大事件が起こるというお話。高校生たちが主人公なので、青春SF小説と言えると思う。
内容を説明してしまうとまったく面白くないと思うので、敢えて触れない。

非常に読みやすく、良くも悪くも引っかかる所がなくて、一気に読める感じだった。感銘を受けるようなセリフもないが、物語に入り込むとどんどん先に読み進みたくなるタイプの小説。
ただ、印象に残ったことが二つ。
ひとつは、竹生島。琵琶湖が世界でも珍しい古代湖だというのも知らなかったが、島が浮かんでいることも知らず。この竹生島の謂れが面白い。
伊吹山の神である多多美比古命が、姪で浅井岳(現在の金糞岳)の神である浅井姫命と高さを競い、負けた多多美比古命が怒って浅井姫命の首を切り落としたその首が琵琶湖に落ちて竹生島が生まれたという。なんともグロテスクで豪快な話。
一般的に、長くても数万年といわれる湖の寿命をものともせず、400万年〜600万年も前にできてから現在まで満々と水を湛える古代湖で、古い神々の伝承が残っているのなら、何か不思議な力が琵琶湖に宿っていてもおかしくはないと思わせる。
もうひとつは、滋賀県内の全ての小学5年生が経験するというフローティング・スクール。小説内には詳しいことが書かれていなかったが、とても楽しそう。船酔いするコには地獄だろうが、そういう体質だと欠席できるんだろうか。学習船「うみのこ」に乗って、プランクトンを見つけたり、船に泊まったり。
海もデカイ湖も無い埼玉県では、林間学校というものがあったけれども、それに代わるものなのだろうな。ただ山を登るだけの林間学校なんぞよりも、フローティング・スクールの方が数段楽しそうだ。

『偉大なる、しゅららぼん』を読んで、終始私の頭の中をちらついていたのは、”家系”とか”血筋”というものだった。
私には、最も縁遠い種類の話だったから。
うちの両親は両養子である。つまり、祖父母とは血が繋がっていない。いや、実質血の繋がった祖父母も2組存在していたわけだけれども、それは脇においておいて、「あなたの祖父母よ」と言われてきたのは、血の繋がっていない1組だったわけで。
そのことをあまり深く考えずに育ってきたけれど、いざ結婚してみると、ダンナさんの親戚とお付き合いすることになり、「親戚とはこういうものなのか」とあらためて考えることになる。
血の繋がった祖父母たちは、ほとんど早くに亡くなってしまっていたし、父母の兄弟姉妹やいとこたちと全く付き合いが無かったわけではないけれども、そこにはどこか線が引かれていたような感覚があった。
おまけに、うちの両親は自分たちの親戚についてあまり私たち子供に語らなかったことで、今もって、うちの家系のことがよくわからない(苦笑)
なんとなく”親戚”だと思っていた人が亡くなっても、兄たちと「それで、結局、あれはどういう関係の方だったの?」みたいな。両親がボケ始めた今、一通り調べておかねばならないと思って確認したことがあるのだけれども、一度聞いたくらいでは理解できず。そのときのメモ書きを後から見返してもよくわからない。
私や兄たちからしてみれば、一応血の繋がった親戚は把握しているものの、それもどことなく余所余所しい感じで、いまだに距離感がつかめないでいる。まったく孤立しているわけではないものの、自分たちだけが血の繋がらないこの家系を細々と継いでいる感覚は消えない。ま、私はもうそこから嫁に出たわけなのだが。
家が存続していくことに、今よりももっと重点を置いていた時代で考えれば、養子などという話は珍しくもなんともないわけで。でも、血筋とか家系の話になると、なんとなく自分の中にもぞもぞするものがあるのは否定できない。
世の中、親戚付き合いといっても千差万別なんだろうけどね。

話を戻して、と。
琵琶湖には、高校の修学旅行で行ったことがある。比叡山延暦寺とセットのコースだった。
実は、いくつかのコースに分かれる日があって、クラスごとに振り分けられたのだけれども、うちのクラスは華々しく人気のあった神戸コースをはずれ、地味な琵琶湖コースと相成った。
気が進まないコースではあったが、琵琶湖を前にしたときの、「これ、ほんとに湖か?」というスケールのデカさは忘れない。延暦寺のことは何ひとつ覚えてないが、琵琶湖の印象は強烈だった。
今にして思えば、琵琶湖コースでよかったかな(笑)

最後に、この作品は映像化(音声化? 笑)はムリだと思う。やめとけ。
posted by nbm at 17:13| Comment(4) | TrackBack(1) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
家系とか、その事情とかは
知る人がいるうちに
聞き取りなどして調べていたほうがよいですね
戸籍も直系ならば
遡って請求できますし
家系図作りもできますよ

うちのママ母かずこは
元旦が誕生日になっていますが
本当の誕生日はいつだったか
知る人がもういません
なので
占いもあてにならないとボヤいておりまする
Posted by プリュム at 2011年07月28日 19:22
プリュム 様

家系図なんて大それたものは必要ないと思うのですが
自分の両親も含めて、事情を知る人がどんどんいなくなっていくので
一応確認しておかんと、と焦りますね(笑)

お誕生日があやふやというのは
昔はよくあったことのようですが
どこか心許ない気分になるのが不思議です。
自分の出自というのは、意外と大きな意味を持つものですね。
Posted by nbm at 2011年07月29日 10:09
こんにちは。

私は、『魔コごろし』を読んだのが初万城目学作品で、なんだか気になっていて、
万城目学作品を読むのは『偉大なる、しゅららぼん』が2作品目でした。
この作品をきっかけに万城目学作品に対する「興味」が「確信」に変わりました。
万城目学作品の読了後の爽快感は格別だと感じています。
万城目学カラーを大切に書き続けていただきたいです!

残念ながら、まだ「琵琶湖」には行ったことがないので、
是非一度行ってみたいです♪
Posted by ミユウ at 2011年07月31日 15:09
ミユウ 様

私にとっての初万城目作品は、『鴨川ホルモー』でした。
その後、『鹿男あをによし』と『ホルモー六景』を読んだ後は触れてませんでしたが
ミユウさんに教えていただいた『魔コごろし』を読んで興味が再燃し
『プリンセス・トヨトミ』と『偉大なる、しゅららぼん』を続けて読みました。
これからも、”万城目学カラー”で書き続けてもらいたいですよね!

高校生当時、琵琶湖が古代湖だと知っていたら
もっと興味深く思っただろうにと、今になって思います。

私の住む埼玉県と滋賀県は、似ているところがあるといわれてます。
それを聞いてから、滋賀県にも興味が沸いています。
Posted by nbm at 2011年08月02日 09:16
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