2016年01月21日

輝け!nbm Awards 2015<書籍編>

続きまして、「輝け!nbm Awards 2015<書籍編>」をお送りします。
昨年は、大作のSF古典を読むのに手間取ってしまい、それがブレーキとなって他の本が読めなくなるということに……それと、読んでみたはいいけれど、つまらなかったり自分の感性に合わなかったりという本が多く不発だらけ。読んだけれど、記事にしていない本も多いし。
なので、本当に簡単に憶えているものだけをまとめておきたいと思います。

<ビジュアル賞>
『世界の廃墟』 監修・解説 佐藤健寿
→過去記事アーバン・エクスプロレーション
世界の名だたる廃墟を収めた写真集。「アーバン・エクスプロレーション」、つまり「都市探検」が楽しめる。
廃墟を芸術作品のように眺めることを楽しむ人は増えていると思う。朽ちていくものに美を見出すのは、不思議な感覚だ。
日本では、廃墟がブームになって久しいと思うが、世界でも同じように廃墟を楽しむ人々がいて、日本にはない趣の廃墟が数多く存在していることを知った。

『生命の森 明治神宮』 執筆 伊藤弥寿彦/写真 佐藤岳彦
→過去記事都会の真ん中の実験林
代々木の森に誕生してから100年、静かに守られてきた明治神宮。人工的に生み出された自然にスポットライトを当てて、聖域ゆえに明かされてこなかった実態を教えてくれる写真集。
自然のたくましさと、明治の学者の先見の明にうならされる。

『埼玉たてものトラベル-愛すべき62のたてもの-』埼玉たてものトラベル委員会
近年、近代建築のビルや洋館などを観るのが趣味のひとつになっているのだが、埼玉県内に密かに現存しているレトロモダンな建築をいくつも教えてもらった。ディティールを紹介しつつも、全てを明かさず、ガイドとして有用でありつつ、実際の見学を邪魔しない上手な作り方。近代建築にかぎらず、現代のユニークな建築物も掲載。
埼玉県というところは、魅力を発信するのが非常に不得意で、「何もないところ」と思われているし、住んでいる自分たちもそう思っているのだが、発掘してみると意外に面白いものがあるということがわかってきた。
簡単に見学できない所もあるが、見学可能な所は訪ねてみたいと思った。


<学術賞>

『眼の誕生 カンブリア紀大進化の謎を解く』 アンドリュー・パーカー
→過去記事赤・緑・青、それから
「カンブリア紀の爆発」、それは地球の歴史からすれば、ほんの一瞬の出来事に過ぎない。
この生物進化の爆発を起こした原因は一体何だったのか。その謎に迫るのが、この本のテーマ。
我々が生きていく上で、多くの情報源としている視覚というものが、どのように獲得されていったのかを推測するという壮大な話。

『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』 小林朋道
「 鳥取環境大学の森の人間動物行動学」シリーズ第一弾。自然豊かな鳥取環境大学の敷地内で様々な動物たちが巻き起こす出来事が綴られた本。
もう何年も前に書店で見かけて気になったまま、タイトルや著者名を忘れて辿りつけなかったのだが、ひょんなことでダンナさんが全然関係ないことを検索していたときに偶然発見。これこれ、これを思い出したかったのよと早速図書館で借りた。シリーズは8冊出ているので、ちょびちょび楽しもうと思っている。


<小説賞>
『今日から地球人』 マット・ヘイグ
→過去記事知っていると思うな。考えられると知れ。
とある星から地球に派遣された一存在が、地球人が素数の秘密を解き明かすことを阻止するために、数学者の体を乗っ取って地球人として生活することに……
SFエンターテインメントの体で、人間という存在を究極に客観視する哲学的な1冊。

『屍者の帝国』 伊藤計劃×円城塔
→過去記事生と死をめぐる物語
伊藤計劃の遺稿原稿30枚を盟友・円城塔が書き継いで完成させたという作品。フィクションのキャラクターが豪華共演している。
この作品の冒頭30枚が伊藤計劃の絶筆ということを考えると、すでに死の病で闘病も長く、おそらくは死期も悟っていたであろう著者によって、明らかに生と死について書かれている作品で、それを著者なりに噛み砕いてSFエンターテインメントに仕上げようと目論んでいたことが想像される。そのまま書き続けられなかったことが残念でならないが、円城塔も好きなので、これはこれで楽しめた。

『ジェノサイド』 高野和明
日本の大学で創薬化学を専攻する大学院生に送られてきた、急死した父からのメッセージ。アフリカの奥地で秘密裏に抹殺されようとしている存在。その抹殺を命じられた傭兵たち。難病を抱え死期にいる傭兵の息子。
これらが密接に関わりあって、人類存亡がかかった壮大な話に発展していく。
高野和明は『13階段』以来だけれど、とてもおもしろかったので他の作品も読みたいと思いつつなかなか読めていなかった。『ジェノサイド』もしかり。図書館で文庫の新刊を見かけ、通勤電車内で読むのにちょうどいいと借りた。
なんでこんなに日本人を貶めるのか、その必要性は感じなかったが、それを除けば物凄く楽しめたエンターテインメントだった。ドキドキワクワクしながらどんどん読み進む。かなり残酷で悲惨な描写もあるが、この作品には必要不可欠な要素。
人智を超えたものの思考する世界を考え出さなければならなかった作者の偉業には脱帽。


<nbm大賞>
『羊と鋼の森』 宮下 奈都
ピアノの調律に魅せられた一人の青年の物語。ここにきて、本屋大賞にノミネートされているな。
読みやすい本なのだが、途中で何度も本をそっと閉じ、思いを巡らせた。ゆっくり味わいながら読みたいと思わせるような、こういう本にはなかなか出会えない。
世の中、好きなことをして生計を立てることができるなんて人はほんの一握りだろうし、たとえそれができたとしても思うようにいかないことが多いのが現実だと思う。
大人たちが知ったような顔で子供たちや若者に「夢を持て」とか言ったりするのだが、虚しく聞こえるのが当たり前な気もする。
それでも、誰かが一生養ってくれるのでなければ、人は何かしらの仕事をして生きて行かなければならない。
別に、仕事に限らなくてもよいのだけれど、自分が「すべき何か」もしくは「したい何か」を見つけられないでいる人は多いと思う。
それでも、そんな「何か」はあった方が楽しいし、生活に張りが出るってものだ。
そんなテーマの周辺のもやもやした感じを、特に綺麗に解決はしないのだけれど、もやもやしたままで後押ししてくれたり、意外な方向に転換して進めるようにしてくれる。失敗した肉じゃがを美味しいカレーに変身させてくれるような。
これを読むまでは、上記の『ジェノサイド』が年間で一番面白い作品だったのだが、これを読んでしまってはね。
静かな森の中を散策していたら、目の前が急にひらけて美しい景色に出会ったような感覚。それが山間に沈む夕日なのか、凪いだ海なのか、夜の星々なのか、色とりどりの花畑なのか、人によって違うのだろうけれど。

普段はあまり小説を読みませんが、昨年は私にしては数多く小説を読みました。
小中学生の頃から、音楽を聴き、映画も数多く観てきましたが、2000年代に入った頃から頭打ち感を覚えるようになって、音楽も映画も急激に興味が薄れてしまいました。現在数多く観ているアニメでさえ、そう思い始めています。
それなのに、不思議なことに本への興味は尽きず。電子書籍という形式はあれど、こんなアナログなメディアが生き残っているのは不思議な気もしますが、表現の自由度が高いし、ジャンルも無限に広がっていますからね。
仕事を始めたお陰で、通勤時間という読書に充てられる時間ができたので、今年はたくさん本が読めるかもしれないとワクワクしております。
タグ:nbm Awards
posted by nbm at 10:30| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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