2016年04月07日

ニッチが大好き

サンキュータツオ『ヘンな論文』を読んだ。
ニッチなことを真剣に日夜研究している人たちがいることを教えてくれる立派な本だった。
中でも「「コーヒーカップ」の音の科学」は面白かった。
インスタントコーヒーをお湯に溶かすとき、スプーンとカップのぶつかる音が段々と高くなるのはなぜかということを研究している。言われてみればそんな気もするけど、さして気にしたこともなかった。
結論からいうと、粉末に含まれている気泡が原因だということらしいのだけれども、これを導き出す過程が面白い。原因は粉末なのかお湯なのかに始まり、粉末だとわかったら入浴剤まで試してみるとか。気泡だとわかればコーラやビールで試してみるとか。これぞ科学者だよなぁ。この原因を特定する探究心。可能性を排除していくプロセス。
最後の湯たんぽ研究のお話は、意外にシリアスな方向に繋がり、ダウナーな気分になる。
人の研究を勝手に横取りするような輩は後を絶たないのだな。まじめに湯たんぽを研究してきた方の研究結果を勝手に使うなんて……
とはいえ、湯たんぽの歴史は興味深い。
ネジがアジアにないものだったというのも勉強になった。これは、江戸時代に徳川家で使われていた湯たんぽのふたがネジ式で、そのことから外国から輸入されたものではないかと類推されるというくだりで知った。
ヘンな論文なんて、探せばいくらでも出てくるんだろう。続刊が出そう。
この本を手にしつつ、サンキュータツオさんってどこかで見かけた名前だなと思っていたのだが、1月から3月まで放送していたアニメ『昭和元禄落語心中』のイベント出演者に名前があった。落語にも造形が深くていらっしゃるようで。

円城塔『エピローグ』も読んでみた。
対となる『プロローグ』を読んだなら、こちらも読まねばと。(→過去記事始まりの物語
本来、『プロローグ』が文芸誌に連載されていたもので、『エピローグ』がSF雑誌に連載されていたものなのだけれど、『プロローグ』の方がSF色が強くて、『エピローグ』の方が文芸作品の香りがした。
というのも、『エピローグ』は壮大な恋愛小説でもあるからだ。
筋は説明できない。すごく感覚的にただ読んだ。
でも、そこここにハッとする文章があり、そんな部分を繰り返し読みつつ読み進んだ。
理解しようとするよりも、そうやって楽しむ部類の本だと思う。
ひどく哲学的なようでもあり、哲学を放棄したようでもあり。
「アニマリス・モデュラリウスって聞いたことあるような気がするけどなんだっけ?」とか思ったりしながらも、比喩がピンポイントでわかりやすく、「どう想像したらいいんだ?」と本を放り投げそうになるのを思いとどまらせてくれる。
とある書店で、『SFが読みたい!』をぱらぱらめくっていたら、BEST SF 2015の国内第1位の作品がこの『エピローグ』だった。驚いた。このときはまだ読む前だったのだけれど、読もうとは思っていたから。
ところが、この本、わが街の図書館ではまったく他に借りられる気配なし。どうなってんの!?
まぁ、好き嫌いは分かれるとは思われる。

SFで次に読もうと思っているのは、ケン・リュウの『紙の動物園』。
『SFが読みたい!』で知った。
『SFが読みたい!』をぱらぱらと立ち読みしていたのは、勤務先がある駅近くの書店。
入り口は小さいのだが、入ってみると奥が広くて、思っていた以上に蔵書があった。
『SFが読みたい!』の横に『エピローグ』と『紙の動物園』が並んでいた。他にも、オススメっぽく本棚に並ぶ本のチョイスのセンスが良くて、がんばって大型書店に対抗しているなと思った。
ほとんどの本は書店で買わずに図書館を利用する私だが、地元図書館にない本でリクエストもはばかられるようなものは購入している。
いただきもののクオカードを消費するために、ジュンク堂でまとめて買うことが多いのだけれど、この書店なら現金で本を買いたくなるなと思った。小さな書店への応援の意味もこめて、近々何か現金で購入しようと思っている。
posted by nbm at 17:15| Comment(4) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
タツオ氏のこの研究は、ラジオでもやってました。っていうか、元々そこから書籍に発展したのかも。
近年、そのニュースワイド番組の左傾化が甚だしくて、今は聴かなくなったのですが。

タツオ氏と、マキタスポーツ氏とプチ鹿島氏による鼎談…というか、オジサンたちの素晴らしいダベり番組『東京ポッド許可局』というのがあり、その名が示すようにポッドキャストで聴けます。

http://www.tbsradio.jp/tokyopod/

これは面白いですよ。放送時でなくても何時でも聴けるので、ヒマなときにでも是非。

落語とタツオ氏といえば、渋谷での新しい方向性の落語会をプロデュースしてます。で、この御仁、知る人ぞ知る今は無き、古典芸能に造詣の深かった古書店『上野文庫』で働いてた経験があるんですよね。
落語好きにとっては学歴や現職よりも、そこをうらやましい経歴だと思います。





Posted by 中林20系 at 2016年04月10日 20:05
中林20系 様

もともと、変な論文集めはサンキュータツオさんの趣味だそうで
それをラジオで披露するようになって……
という話は本の中に出てきました。
ラジオから論文を書いた研究者に繋がったりしていたようですし。

アニメ『昭和元禄落語心中』を観たり、立川一門の活動を知ったりする中で、落語を広めるためにいろんな方がいろんなアプローチをされているんだなと気付かされました。
サンキュータツオさんもそういう方のお一人なんですね。
Posted by nbm at 2016年04月11日 01:38
ジュンク堂が懐かしくてコメントします。2000年くらいまでは今ほどネットも普及しておらず書籍の販売量が多かったように思います。1990年頃は紀伊国屋など大手書店がまだ地方へさほど進出しておらず、地方の老舗書店にも勢いがあった。『ジュンク堂』って池袋を拠点にしている人は利用しそうですが、関東ではマイナーな気がします。(気のせいか)

長崎には好文堂書店という老舗書店があり休日には家族で市街地を散策し、本屋へ寄り、石丸文光堂で高級文具を眺め、食事をして帰宅するという「正しい休日の形」がありました。当時は全国どこでも似たような感じの老舗書店があったのだと思います。

富山へ来てからは近場の明文堂書店か喜久屋書店(関東の人には馴染みがないかもしれません)福岡では天神の紀伊國屋か丸善。神戸はジュンク堂なのだけれど…私は大阪へ足を延ばして旭屋か丸善を好んで利用してました。札幌では紀伊国屋。東京にいた時は本格的なモノは三省堂で買い求めていました。
Posted by まいす at 2016年04月13日 21:00
まいす 様

石丸文光堂さんは、高級文具というと伊東屋とか丸善の文具売り場みたいな感覚ですかねぇ。

明文堂書店さんは、HPを見に行ったら、北陸地方となぜか埼玉に進出しているようですね。
フランチャイズ契約している「TSUTAYA」という名称になってますが、レイクタウンに綺麗な書店を作ったそうで、ここは行ってみたいです。
県内とはいえ、越谷はかなり遠いのですが……
喜久屋書店さんは、関西地方を中心に展開されているようですね。

考えてみると、私は書店を目指して街に出るということはなく、行った街にある書店に入る傾向があるようで。
なので、自分のあまり行かない街にある紀伊國屋や三省堂や丸善は馴染みが薄いです。
通勤していた日本橋では、たまに丸善に行くことはあるものの、今はCOREDO室町に入っているタロー書房がお気に入りでした。通勤時間に読む文庫はよくここで買いました。推理小説やSFが充実してたんです。ツボを心得ているといいますか。
学生時代は、池袋西口にあった芳林堂書店が好きでした。学術的な本が豊富だったので、大学の授業で使う本はここでよく買いました。残念ながら、もう失くなってしまいましたが。

池袋では、東武の旭屋書店や西武のリブロによく行きました。特にリブロは、芸術系の本が充実していましたね。ここも今はもうありません。三省堂書店が新たに入りました。
池袋にジュンク堂ができてからは、「あそこに行けば何かしら見つかる」という思いで、本を買おうという目的ならば必ず行く場所です。目移りして、楽しくて、ついつい長居してしまいます。

確かに、関東ではジュンク堂はまだマイナーかもしれませんね。
都内に店舗はいくつかありますが、規模の大きいものは少ないですし。
それなら、他の大型書店がいくらでもありますからね。

街の本屋さんという感じのところだと、文教堂がかろうじて残っています。
最近、クオカードが使えるようになり、個人的に便利になりました。
Posted by nbm at 2016年04月14日 00:47
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