2017年01月17日

輝け!nbm Awards 2016<書籍編>

昨年は、主に読書をするのが通勤中という状況になり、こうなると、普段はあまり小説を読まない私も小説をよく読むようになる。なぜそうなるのかは、よくわからない。
昨年は50冊くらいしか読んでいないと思うのだけれど、そのうち約3割が小説で、そのほとんどがSFだった。
記事にしていない本も多いので、まとめながらnbm Awards 2016<書籍編>を発表していきたいと思う。
いつものことながら、新刊はほとんどない。
以下、敬称略。

<絵本賞>
『ぼくのニセモノをつくるには』 ヨシタケシンスケ
ヨシタケさんの本は発想が面白くて、どれにも惹かれる。図書館だと人気で借りられっぱなしで置いていないことが多いのだが、たまたま見つけて借りられたのがこの1冊。
やりたくないことだらけの「ぼく」が、身代わりのロボットをつくろうと思いつく。それには、自分に極力似せるために、まず自分のことをよく知らなければならない。「ぼく」は、自分の特徴について様々に考える。
笑えるけれど、哲学的だ。自分というものについて考えさせられる。
『夏のルール』 ショーン・タン 著/岸本佐知子
ショーン・タンは、大体読んでいる。
少年たちの夏。兄弟が交わすシュールなルール。夏という季節だけが持っている特別な雰囲気が描かれている。
夢の中を描いたような奇妙な景色。流石。
『焚書 World of Wonder』 鴻池朋子
鴻池朋子さんを知ったのは、2009年の夏。上野で観た展覧会『ネオテニー・ジャパン』でのことだった。「惑星はしばらく雪に覆われる」は、雪の中を歩く6本足の狼の造形。その世界観に惹きつけられた。
その鴻池さんの絵本。というよりも画集といった趣だけれど。美しく精緻なドローイングが迫ってくる。モノクロだからこその説得力。

<学術?賞>
『「24のキーワードでまるわかり!最速で身につく世界史』 角田陽一郎 (→過去記事暇つぶしの成果
テレビのバラエティ番組を制作してきた著者が、わかりやすく世界史の概要を教えてくれる。
歴史が苦手な私でも、世界史の全体像が見渡せるような感覚が楽しい。文明や宗教や国家や民族といったものが根っこにあって、お互いが関連しながら世界が動いていく様子が見えてくる。その一方で、稀有な日本という国の存在も再認識できる。
『ヘンな論文』 サンキュータツオ (→過去記事ニッチが大好き
ニッチなことを真剣に日夜研究している人たちが書いた論文の数々。
テレビなどでイグノーベル賞が話題にされることもあるけれど、本当にいろんなことを真面目に研究している方々がいらっしゃるもので。
我々の生活に役立つことなのかと尋ねられれば、よくわからないようなことも多いのだけれど、興味の赴く先に突き進める研究者というのはある意味幸せな人たちだなとも思う。
『偶然短歌』 せきしろいなにわ (→過去記事57577となかなか進まない時間
Wikipediaの説明文の中から抽出プログラムで抜き出された五七五七七。その偶然性。
意外な言葉の羅列を楽しむ一方、未知の扉を開くことにもつながるという一粒で二度美味しい仕様。

<地霊賞>
『墨東地霊散歩』 加門七海 (→過去記事10万+10万+10万=30万
時代ごとに積み重なったレイヤー構造になった土地の歴史を紐解く地霊もの。
なかなか縁のない墨東地域の史実をじっくり読ませてくれた。その後、それを踏まえて実際に足を運んだし(→過去記事両国タイムトリップ)、それでこの地の背負ってきた歴史が自分の中により刻まれることになった。
『東京都三多摩原人』 久住昌之
生まれてからずっと三多摩で暮らしてきた久住昌之が、あらためて三多摩を歩いてみてリポートするという企画。ちなみに、イラストを描いているのは著者の弟の久住卓也。兄弟の仲がよく、この本の中のノスタルジックな思い出話にもちょくちょく登場。
三多摩というのは、ざっくり言えば、23区と島を除いた東京都。23区の一部も三多摩に入っていたし、かつての三多摩は神奈川県に含まれていた。
埼玉県南西部で生活してきた自分にとっては、たとえば県内東部や北部よりもずっと身近な地域。友人や知り合いも多く住んでいる。馴染みはあっても、三多摩は広い。行ったことのない地域や名所は多いし、あらためて歩いてみたいと思わせる。
「江戸」や「東京」というようなイメージからはズレる三多摩。どこかのんびりとしていて、気負いがないので、私は好きなのだけれど。
久住さんが歩いて感じた感覚がニュートラルに伝わってくる。

<ビジュアル賞>
『くらべる東西』 おかべたかし・文/山出高士・写真 (→過去記事暇つぶしの成果
日本の東西の文化の違いを、写真とわかりやすい解説でひと目でわかるように教えてくれる。
生まれてからこの方、埼玉県を出て生活したことがない自分にとっては、こういった比較文化論は興味深いテーマのひとつで、大好き。
『漢字のなりたち[日英対訳]』 白川静 著/アラン・スウェイツ
漢字の成り立ちに関する議論は諸説あるようなのだが、白川静の漢字の成り立ちに対する説明はとてもおもしろいので好きだ。
それを古代文字の表記から簡潔に説明してくれる上に、英語の対訳がついている。解説してくれるのは、14系列100文字ほど。
薄い本なので、絵本感覚で楽しめるし、英語だとこういう風に表現するのだなと勉強にもなる。

<小説賞>
『12人の蒐集家/ティーショップ』 ゾラン・ジヴコヴィッチ 著/山田順子 訳(→過去記事愁いのひととき
東欧の「ファンタスチカ」というジャンルの1冊。
内容も面白かったのだが、「音」としての活字を意識させられたという点で興味深い本だった。「色彩」を意識させられる本はあっても、「音」が印象的な作品は珍しい。原書をそのまま理解できたら、より楽しめるのかもしれないが。
「12人の蒐集家」も「ティーショップ」も、一周まわって元に戻ってくるみたいな構成なのだが、それがなんとなく想像できたとしても、エトランジェ気分で楽しめる。
『未来のイヴ』 ヴィリエ・ド・リラダン 著/齋藤磯雄 訳 (→過去記事古めかしい2冊
「ハダリー(Hadaly)」……古代ペルシャ語で”理想”を意味することば。そう名付けられた人造人間。
小説の世界に初めて登場した彼女は、とある貴族が求めた理想の女性像そのままに創られた。
古い文体で旧字で書かれた1冊なので、読みにくいと拒絶すればそれまでだったのだが、長い時間をかけてなんとか読了した。苦労して読んだ分、思い入れも深くなるというもの。
『中二階』 ニコルソン・ベイカー 著/岸本佐知子 訳 (→過去記事57577となかなか進まない時間
中二階のオフィスに向かうまでの短いエスカレーターに乗っている束の間。ほんの短い間に思い浮かんだことが1冊の本に。
時間が凝縮されている。脳内の時間と現実世界で流れる時間とは違うものなのだ。
内容うんぬんよりも、ひとつの読書体験として、経験してみるのも面白いと思う。
『叫びの館』 ジェイムズ・F・デイヴィッド 著/公手成幸 訳 (→過去記事暇つぶしの成果
オカルトSFスリラー?ジャンル分けするのが難しい本。
複数のサヴァン症候群の能力を統合するですって?そこに過去の連続殺人事件やある特殊能力を持った人間などがからみあって、話は一体どこへいくのやら。心底楽しんだ1冊。

<nbm大賞>
『虐殺器官』 伊藤計劃
寡作のまま帰らぬ人となってしまった伊藤計劃の本は、もったいなくてなかなか読めずにいたのだが、アニメ化を前にして読まずにいられず、ついに最後に残しておいた1冊に手を付けてしまった。
通勤電車の中で読んでいたら、ついつい集中していまい、気づいたら2駅も乗り過ごしていた……驚愕!それほど、話の中に惹きこまれてしまっていたのだ。時間には余裕を持って通勤しているので遅刻はしなかったが、こんなに没入してしまう本は久々だった。小学生時分には、本を読んでいると人の声が聞こえないということはしばしばあったのだけれど、いい大人になってからはほとんど初めての体験だったかも。
現在よりも少し先の近未来。ありとあらゆる場で個人を認証するシステムが発達し、テロを抑えこむことに成功した世界。ところが、後進国では各地で内戦や民族紛争が激化。その影で暗躍している人物が浮かび上がってくる。米軍の特殊部隊に所属している主人公が、その影を追うが……という筋。
SFだけど地続き感のある兵器とか、これから起こりうると感じさせる分岐した未来観とか、現に起きている世界情勢だとか、魅力的な要素はたくさんあるのだけれど、この人が一貫して書いているのは「生命」の問題だと思っている。命を奪う、命を失う、そういったテーマに貫かれているからこそ、惹きつけられる物語になっているのだと思う。
ついに来月から劇場版アニメが公開される。かなりハードな内容なので、アニメ化されたときにどこまで描写するのか疑問。アニメ制作会社が倒産し他が引き受けて完成まで長い時間がかかってしまったが、そんなケチがついたのを跳ね除けて、いい作品になっているといいなと願う。

年末年始に、BSジャパンでオードリー若林がやっている番組『ご本、出しときますね?』がまとめて放送されていたのを観た。近年、人気を得ている作家さんたちのトークは面白い。中でも、私は長嶋有さんの話が面白かった。
その番組では、最後に番組内容に沿ったテーマを扱う本を作家さんが紹介してくれるのだが、私が観ていた回では、岸本佐知子さんがらみの本が多かった。そして、やっぱり自分が好きな路線だと実感する。
今回挙げたショーン・タンも、今更ながら岸本佐知子さんの訳だと知ったし、『中二階』もそうだ。つまり、自分にとっては面白いということだ。今年も岸本佐知子さんが書いたり訳したりした本を読みたいと思う。

今読んでいるのは、『Visions』というSFアンソロジー。
今年もできるだけたくさんの本を読んでいきたい。
タグ:nbm Awards
posted by nbm at 15:46| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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