2019年01月08日

輝け!nbm Awards 2018<書籍編>

さぁ、昨年の総括を初めてまいりましょう。最初は、書籍編です。


<勉強になります賞>

『マジ文章書けないんだけど -朝日新聞ベテラン校閲記者が教える一生モノの文章術-』 前田安正
→過去記事「輝け!nbm Awards 2018<書籍編>っと、その前に」
女子大生が就活でエントリーシートを書くことを前提に、なぞのおじさんが文章を書くことを指南してくれる。あらためて大人が学ぶ国語についての本を何冊か読み、その中で一番気に入って甥に買い与えた1冊。文章が苦手な人が読むのだろうから、こういうライトなつくりが重要だと思う。
『ピジョンの誘惑 論理力を鍛える70の扉』 根上生也
「鳩の巣原理」についてクイズ形式で教えてくれる。例えば、3つの巣箱に4羽の鳩を入れるとしたら、2羽以上入る巣箱が少なくとも1つはあることになる。この一見単純な原理を、様々な問題に応用して考えていくことができるというもの。5人以上いれば、同じ血液型の人がいることになるし、13人以上集まれば同じ誕生月の人がいることになるというわけ。
最初の方は理解できるのだが、どんどん数学的に難しくなっていき、3分の2くらいは理解できなかった。とはいえ、「鳩の巣原理」がどういうものか、どのような問題に応用できるのかは大体わかり、勉強になった1冊。

<ビジュアル賞>
『本を読む時に何が起きているのか ことばとビジュアルの間、目と頭の間』 ピーター・メンデルサンド
→過去記事「輝け!nbm Awards 2018<書籍編>っと、その前に」
視覚的な観点から読書という行為を分析してみようという試みがなかなか面白い。普段、無意識にしている行為を詳しく掘り下げて解説されると、人間という生物の奥深さを感じる。
『絶対に出る世界の幽霊屋敷』 ロバート・グレンビル
世界には、「絶対に幽霊が出る」というお墨付きの場所がけっこうあるらしい。写真が主で、そこにまつわるエピソードはあまり詳しくは書かれていないが、特に歴史ある建物は、過去にあった事件などを想像しつつ観るとそれっぽく見える。幽霊云々はさておいて、いわくつきと集められた建物は廃墟も多く、それらが醸し出す雰囲気を楽しめる写真集。
『まぼろしの奇想建築 天才が夢見た不可能な挑戦』 フィリップ・ウィルキンソン
→過去記事「輝け!nbm Awards 2018<書籍編>っと、その前に」
古今東西の建築家や画家などがデザイン・設計したもので、様々な理由から実際に建設されなかった建築物を集めた1冊。これらが建築されていれば……と想像するとワクワクする。
『くらべてわかる淡水魚』  斉藤 憲治/内山 りゅう
姪の夏休みの宿題につきあって川魚を観察したとき、とても参考になった本。ヒレの形や付き方、からだの模様などで川魚の見分けを教えてくれる。山と渓谷社のこの「くらべてわかる」シリーズは、他に昆虫・野鳥・きのこ・葉っぱなどがあり、そちらにもそそられる。
『自衛隊防災BOOK』 マガジンハウス  自衛隊/防衛省協力
さほど目新しい情報はなかったが、人の担ぎ方やロープの結び方などは覚えたいと思いつつも実践しないと身に憑かないものだ。日本は災害の多い国。多くの人がこういった知識を持ったなら、いざというときに役立つとは思う。
『大家さんと僕』 矢部太郎
ご高齢の大家さんが、現代に至っても戦争にまつわるお話をされることが多く、それだけ戦争というものが強烈な印象を残しているのだということを考えさせられる。

<ファンタジー賞>
『RDG レッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴』 荻原 規子
シリーズ最終巻から5年ぶりの作品。これまでの出来事を別の視点から描いたりしているので、過去作品を読み直してから読みたかった。
できることなら、このシリーズはもっと読ませていただきたい。
『間取りと妄想』 大竹 昭子
変てこな間取りの家とそこに暮らす人々の物語。何事か事件が起きて……とか、登場人物たちの内面を深く作品などを所望する人には向かない、静かな静かなお話。間取り図もついていて、建物を想像しながら読むのが楽しい。

<SF賞>
『死の鳥』 ハーラン・エリスン
言わずと知れたSF作家ハーラン・エリスンの短編集。現代から見れば、SFとしては古典と言ってもいいかもしれない。フォントを駆使し、凝った構成で描かれた作品が多いので、けっして読みやすいとはいえない。私のお気に入りは、「ジェフティは五つ」。5歳で時が止まってしまったジェフティと普通に年を重ねる主人公との交流を描いた作品。
『月の部屋で会いましょう』 レイ・ヴクサヴィッチ
→過去記事「輝け!nbm Awards 2018<書籍編>っと、その前に」
いい意味で期待を裏切られた1冊。奇妙な設定が、なぜかしっくりとリアルに感じられる。「この設定おかしいよね。あれ?自分の方がおかしいのか?常識って何だっけ?」みたいになる不思議な感覚が楽しめる。

<ホラー賞>
『ドクター・スリープ』 スティーヴン・キング
『シャイニング』の続編が映画化されたと聞いて、続編なんてあったのかと思い、読み始めた。おそらく、キューブリックが映画化した『シャイニング』しか知らない方は、つながりがよく理解できないのではと想像する。本来は、冬のホテルに籠った家族の息子ダニーが主人公の物語であり、『ドクター・スリープ』はそのダニーが大人になってからの話である。キング作品からは離れて久しい。ホラーらしいホラーを書かなくなったから。でも、『シャイニング』の続編となれば読まないわけにはいかない。長い話なので冗長気味ではあるが、30年分ダニーが背負ってきたものを想像すれば、このくらいの分量は必要だったのかもしれない。調子に乗って、その後キングの『悪霊の島』を読んでみたが、こちらは冗長そのものだった。400ページ近い上巻はほぼ何も起きないままに過ぎていく。長い伏線といえばそれまでなのだけれど、これはいただけない。『ドクター・スリープ』はそれなりに楽しんだものの、私の中のキングは『ペット・セマタリー』で終わったなという実感は変わらない。
『その部屋に、いる』 S・L・グレイ
南アフリカ在住の2人の作家によるペンネームがS・L・グレイ。日本人の自分にとっては、かなりの変わり種が描くホラー小説。
ハウススワップのサイトを通してパリのアパルトマンに滞在することになった夫婦。強盗に入られたばかりで気が滅入り、気分転換にと旅行に来たパリで待っていたのは……というお話。強盗に入られたという設定が南アフリカらしいのか。ホラー小説ってのは、主題と無関係なところで不気味なことや不安に思う出来事を描くのが常套手段となっているものだ。この設定は少なからず効いていると思う。全体的には、心理的なホラーなので、ゆっくりと真綿で首を締められるようなじわじわした恐怖感が味わえる。何かが起きないとつまらない人には向かないかも。

<nbm大賞>
『ぼぎわんが、来る』 澤村伊智
『ずうのめ人形』
『ししりばの家』
『などらきの首』
『来る』という映画が公開されると知り、これはもしかしてと調べると、原作は思った通り『ぼぎわんが、来る』。ホラーが好きだとはいえ、近年の新進のホラー作家の作品にはどうも食指が伸びずにいたが、食わず嫌いも何だしなと読んでみることに。
これがなんと、大当たりだった!鈴木光司の『リング』を読んだときの衝撃には及ばないものの、久しぶりの当たりを引いた感覚。著者はミステリーがお好きらしく、仕掛けが施されていることが多い。ミスリードに気づいたときには「やられた!」と思わされた。私はミステリーは好まないが、伏線による内容の仕掛けと1行の文字数にこだわったりする視覚の仕掛けがあり、本当に楽しませてもらった。こういった手法をホラー小説の中で使っているのを、私は他で見たことがない。中身にはあえて触れずにおこう。これらはほぼシリーズになっていて、霊能力を持つ姉妹が出てくる。が、彼女らは神仏を頼ったりせず、そこにも好感が持てる。
どの作品に出てくるとはあえて言わないが、面白い視点があり、唸らされた。人の思考や記憶が細胞を通じて後の世代に受け継がれるのが「有線」接続だとしたら、「無線」はどうなのか、と。大気中や物体中に記憶の保存先を探して浮遊しているものが「幽霊」なのではないか。そんな話だ。こういった視点の面白さも随所にあった。
1冊読んだら、次が読みたくなり、またその次が……となって、立て続けに4冊読了。後がない。もっと出してくれないかな。
ただし、映画版の『来る』は原作とは別物だと思う。きっと、原作を映像化したと思って観てはいけない類の映画だ。願わくは、ホラー畑の監督、例えば中田秀夫や清水崇あたりに撮ってほしかった。折角の良質の素材を……しかし、妻夫木聡をあの役に当てたのは評価する。どれほど原作に沿って描いているか知らないが、原作通りの人物ならばピッタリだ。

ついでに書けば、『来る』を尻目に『ヘレディタリー』を劇場で観た。映画館で映画を観るのは、『キングコング 髑髏島の巨神』(2017)を観て以来のこと。久々にホラーが劇場で観たいと思った。これも内容を書くことは控えるが、もう少し悪魔ペイモンについて勉強しておけばよかったと後悔。知っていれば、もっと理解できた。ホラーと一口にいっても、私が好むのはオカルト作品。これはちゃんとオカルト映画だったから、そこそこ楽しめた。ちょっと笑っちゃったけど、それも込みで。


昨年は、大作を読むことが多く、数が伸びなかった。
後半は現実逃避がひどく、ホラー系ばかりを読んでいた。身にならないものを読むのが私の趣味なので、それでよいのだが、それにしてもひどかった。
今年もそれは尾を引きそうで、まだしばらくはホラーが続く。後は、SF。ま、毎年そんなもんか。
ラベル:nbm Awards
posted by nbm at 15:36| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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