2021年02月09日

2020年に読んだ本 その2

『怪奇日和』 ジョー・ヒル
中編ホラー小説集。
読んでいると、「キングににてるなぁ」と思う。っと、待てよ?この人って……スティーブン・キングの息子じゃん。そうだった、そうだった。すっかり忘れてました。
キングっぽいけど、どこか新しい。
記憶を吸い取るポラロイドカメラ「スナップショット」、アメリカ銃社会を濃縮したような「こめられた銃弾」、スカイダイビングのはずが雲にひっかかった男の話「雲島」、恐ろしい自然現象(?)「棘の雨」。
どれも設定が風変りで面白く、比喩表現に光ものがあるのが魅力的。純粋に「ホラー」ではないけれど、奇妙な話であることには違いない。「奇想小説」といったところ。

『新しい分かり方』 佐藤雅彦
ビジュアルとその理解の仕方をひもとく1冊。
自分の脳が、感覚が、試される。
例えば、ページが縦に上からA・B・Cと3分割されていてそれぞれの空間に数字がランダムに書いてある。AとBでは1〜5までが書かれていて、Cの中の空いているスペースに人差し指をおくように指示される。そのうえで、Aの「1、2、3、4、5」、Bの「1、2、3、4、5」と数える。そして、C。Cの空間には実は「4」が書かれていない。すると、自分の人差し指で隠れている部分に「4」があるような気がする。というもの。
こういった仕掛けがたくさん収録されている体験的な本。
人間の脳の認識の仕方や心理的な思い込みなどを意識して体験することができる。

『似ている英語』 おかべたかし・文 やまでたかし・写真
Wたかしによるこのシリーズが好きだ。今回は、意味の似ている英単語を簡単に解説してくれている。
相変わらず、写真と簡潔な文章で、違いがすごくわかりやすい。知っていることも多いのだが、確認しながら読んだ。
途中に挟まれているコラムも面白い。「May I have a large container of coffee ?」とは何か。文字数が「3.1415926」の並びになっているのだそうだ。円周率の覚え方というわけ。このコラムでは「リポグラム」という言葉遊びも紹介されていて、それは特定のアルファベットを使わずに文章を作るというものらしいのだが、引き合いにだされている筒井康隆の『残像に口紅を』を読んでみたいと思った。
もうひとつ、「雷ということばを正確に言い表す英単語はない」というのも新鮮な驚きだった。「thinder」は「雷鳴」で、「lightning」は「稲妻」。英語だと音と光が別になっているようだ。「thunderbolt」といえば光と音はいっしょに表現されるようなのだが、「落雷」というのが日本語訳としては正しいようだし。逆に、「雷」が「ゴロゴロ」と「ピカッ」を同時に表現しているということに気付かされた次第。

『東京の階段 −都市の「異空間」階段の楽しみ方−』 松本泰生
東京山の手は武蔵野台地の東端で、江戸期以来、都市化の過程でたくさんの坂や階段が生まれたという。山手線内だけで、階段のその数、650余.そんな階段を紹介してくれている。
江戸の時代に、尾根道と谷道が作られ、両者を結ぶ形で坂や階段ができていったという。それが今にも残っているので、元々の地形を活かした坂や階段が多いということらしい。
味のある階段がたくさん載っているのだが、あまり馴染みのない地域が多いので、実際に通ったことがある場所はほとんどない。
個人的に東京都内で階段といって思い出すのは、まず渋谷のスペイン坂。高校生や大学生の頃に通っていた。坂に沿っていろいろなお店が並んでいたが、不思議な雰囲気の雑貨店「大中」や、店員さんの制服がエロかわいい「アンナミラーズ」が懐かしい。
もう一つは、六本木駅からほど近い場所。階段を下りる途中にあったスナックに会社の上司に連れて行ってもらったことがある。店の窓から墓地が見えたのを憶えている。面白い場所だった。
本書では、新宿区・文京区・港区あたりの階段が多数紹介されているが、北区・板橋区・練馬区・大田区・世田谷区などは掲載されていない。続編があったら読みたいものだ。著者は『凹凸を楽しむ東京坂道図鑑』という本も出されているようなので、そちらも読んでみようと思う。

『BOOK MARK 翻訳者による海外文学ブックガイド』 金原瑞人・三辺律子 編
海外文学を紹介する瓦版が作りたい。湧き上がる気持ちが形となったフリーペーパーの書籍化。年4回発行の3年分。1回で16作品が紹介されている。主に、ヤングアダルト向けに選ばれた本が並ぶ。各回には、けっこう豪華な執筆者のコラムがついていて、それも面白い。
タイトルにあるように、訳者が自ら紹介しているので、そういう点でも面白い。訳の苦労や訳者ならではの作品の魅力が語られているからだ。
聞いたことのあるタイトルや、いつか読みたいとリストアップしていた本もあるけれど、知らない作品が圧倒的に多い。ちなみに、私が読んだことがあるのは、『ライラの冒険』『紙の動物園』『星の王子さま』『一九八四年』の4冊だけだった。
欧米だけでなく、アジア・アフリカ・中近東など、普段なかなか触れない地域の作品もあって興味深い。
ここからまた、私の読みたい本リストに10冊ほど加わった。読みたい本は増えていくばかりだ。
11号「Listen to Books!」で紹介されている『ルーシー変奏曲』(サラ・ザール著)の訳者・西本かおるさんが、訳しながら聴いていたという曲が気になって聴いてみた。現代作曲家フィリップ・グラスの「メタモルフォシス」。同じ主題が繰り返される全5楽章。脳裏に浮かんだのは、姪のコンテンポラリー・バレエの公演。無機質な主題が繰り返される中で、次第にそれが意味のあるものに変化していくような感覚。
12号「これ、わすれてない?」では戦争がテーマだった。『片手の郵便配達人』(グードルン・パウゼヴァング著)で訳者の高田ゆみ子さんが「自分の頭で考えざるを得なくなる。」と評している。
11号で知った現代ピアノ曲を聴いて得た自分の感覚。12号で改めて問われた自分で考える力。書評を読んでいるだけなのに、単なる本の情報だけでなく、得るものが大きかったなと思わされた。
金原瑞人さんのホームページに各号が紹介されている。置いてある書店や図書館も少ないし、置いてもすぐに無くなってしまうらしい。敢えてリンクは付けないが、興味のある方は覗いてみては?
posted by nbm at 11:24| Comment(2) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
へぇ
息子さんも同業者なんですかぁ
機会があれば読んでみたいですね

お父さんとの違いも知りたいしぃ(;゚Д゚)
Posted by プリュム at 2021年02月26日 10:48
プリュム 様

最初は、息子であることを隠してたみたいですね。
正当な評価が受けられないと考えたのでしょうか。
後々、親子で共作も書いているようですが。

奇妙な味わいで、ちょっと新しい感じがします。
機会があったら、ぜひどうぞ。

ちなみに、スティーブン・キング夫人のタビサ・キングの作品も読んだことがあるのですが、残念ながら、こちらは褒められたものじゃなかったです。
Posted by nbm at 2021年02月28日 01:03
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